某国立大学で博士号(理学)取得後、経営コンサルティング会社に就職。
それもつかの間、会社を退職し職のあてのないまま妻を追ってインドネシアへ。
私(saya)が体験したこと、思ったこと、新しく知ったこと等を気ままに書いていきます。

シンガポール&インドネシアのことが中心です。

Singapore Life

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2014年12月10日水曜日

海外在留邦人数比較 ~すでに100人に1人は海外で生活!?数字から見える海外 へ進出する日本人

外務省が出している「海外在留邦人数調査統計」というレポートがある。(ここ
元々、自分も含めて最近海外で働く人が増えたな、という印象があり、日本人のうちどれくらいの割合の人が海外に住んでいるのかと調べてみようかなと思ったのがきっかけ。

1.地域別の海外在留邦人数推移

まず、海外在留邦人数は、長期滞在者(3か月以上の滞在者かつ非永住権取得者)、永住権取得者の合計でカウントされる。この推移を2000年から2013年から並べてみると、以下のようになる。
2000年に約81万人いた海外在留邦人は、2013年に約126万人と1.5倍に増えている。
リーマンショック前後で伸びは鈍化したが、それでも増加を続け、2012年には増加スピードが戻っているようにも見える(2013年の伸び方は鈍化したようだが)。
白抜きの赤丸は、日本の全人口に対する海外在留邦人数の割合である。日本の総人口の伸びは停滞し既に減少を始めているため、日本の人口に対する海外在留邦人数の割合も増加の一途をたどっており、そろそろ1%に到達しそうだ。つまり、日本人の100人に1人が海外で暮らしていることになる。今後も日本の総人口は減り続け海外に仕事を求めていく人が増えることを考えるとこの割合はまだまだ増加していきそうである。
ちなみに、常に南極に3040人いるんだが、この人たちって何してるの、、、観測隊?



下のグラフは、在留邦人数の地域別シェアの推移。これを見ると、やはり、アジア地域での割合が最も増加率が激しく、この2000年から2013年の間にシェアを2割から3割に増加。
比率が増加/減少しているのはそれぞれ以下の通り。
増加:アジア、大洋州、東欧、中東、中米
減少:南極、南米、アフリカ、西欧、北米
この結果からも明らかな通り、先進国から新興国に比率がシフトしていることは明らか。ただ、南米と南極以外は在留邦人数自体は増加している。

2.長期滞在者、永住者の性差

以下は、長期滞在者VS永住者を男女で比較をしてみた。これを見ると、長期滞在者は男性が多く、永住者は女性が多い。長期滞在者に男性が多いのは、単に海外駐在員は男性が多いということを示しているのだと思う。単身赴任者も多いだろうしね。永住者に女性が多いのは、推測だが、独身で海外の現地採用されているような人たちが女性に多いからではないかと思う。自分の周りでも、駐在員の大半は男性であり、現地採用の中で独身である人は全員女性。永住権いわゆるPR取得者も大半が独身女性である。


3.アジアにおける在留邦人数の推移

以下アジアにフォーカスしてみる。
以下はアジア(&オセアニア)の主要な国・地域にいる在留邦人数の推移。中国は急激な勢いで伸びたものの、昨年は一気に減少。豪州は安定して増加。ASEAN地域は順調に増加。特に2010年以降に増加率が顕著に加速していることが分かる。


ASEANの中の内訳は以下の通り。
タイは絶対数もさることながら、順調に増加を続けていることが分かる。これは多くの製造業がタイに進出していることに対応する。ただ、タイも人件費等々コストが増加しているだけでなく、政変の影響もあり来年は増加率が鈍化するのではないかと思う。
シンガポールはここ数年じわじわと増加の兆しあり。統括拠点を設置する国としてとしてシンガポールの地位は不動のものであり今後も日系の企業が進出するだろうが、今後どれだけここが伸びるかは個人的には未知数。というのは、過密すぎるし、コストが高すぎる。シンガポール政府が外国人の流入を抑えようとしているため許可も下りづらい。リー首相は現状のバランスを維持するといい、EPホルダーの数が最近微減したとの話も聞く。各アジアの都市もビジネスインフラも整っていくだろうし、相対的なシンガポールの地位は下がっていくものと思っている。
縦軸の拡大版。


絶対数は低いが、カンボジアに進出する日本人が急激に増えていることが分かる。
海外就職研究家の「もりぞお」さんがサムライカレーを始めたのもカンボジア。カンボジアは東西はベトナムとタイに、北はラオスに挟まれている。南には港もある。市中ではドルが流通しておりドルで資金決済できる。市内でドル預金口座を開設すると金利67%という話も聞く。イオンもできて生活も格段にしやすくなったし、市内は高級車がたくさん走っている。
まぁ弱点を上げるとすると、ポルポトによる虐殺のせいで知識人が殺され、教育の無い人たちばかりが今の親の世代になってしまったこと。国に蓄積された知が一気に破壊されてしまい、識字率も低く何かを教えることに苦労するということ。資源があるのか良く分からないが、資源を採掘をするだけの技術もない。簡単な手作業しかできず未だ裁縫業の一部が行われているだけのようである。子供たちも勉強をがんばるのではなく、観光客からお金をせびることしか考えていない。人口も1500万人とマーケットとしての魅力も乏しい。一度壊されてなかなか立ち直れない悲しい国である。

2000年比在留邦人数の変化率を並べると以下のようになる。
ASEAN平均でも2倍になっていることが分かる。中国は相変わらずすごい伸びだが、今後地政学的なリスクを抱え、現に2012年⇒2013年で減少していることを見ると、今後の伸びは所謂「チャイナ+1」が牽引しそうである。国の人口もそれなりに多く、かつ増加率が大きい所ではベトナム、インド、タイ、バングラデッシュあたりが伸びるか。これまで伸びが鈍かったインドネシア、ミャンマーも今後大きく伸びて行きそうである。ただ、どちらも政府の規制緩和がどこまでいけるかといった問題がある。インドネシアは実は非常に保護主義的な、外資に対する規制を貸している国といえる。これはどこかでオランダ、日本に搾取された過去があるからかもしれない。ミャンマーははっきりいってまだ国づくりの段階。自分たちも国造りのノウハウを持ち合わせていない。外資を入れることで国の発展のスピードは加速するが、一方で富を搾取されかねないという思惑は当然どこの国にも働く。アメリカ制裁のせいで中国企業ばっかり入ってきてしまったために政府は危機感を抱き全方位外交に切り替えたようだが、どこまで外資参入を許すか今後の状況次第だと思う。


以下は国の人口VS在留邦人数の比較である。
これにより、その国の人口に対してどれくらい日本人の進出が進んでいるかが分かる。
緑の破線はその比率が0.1%である境界を示しており、この線より上にある国は人口1万人あたり在留邦人が1人以上いることを表す。
ちなみにこの比率が最も高い3カ国は、
 シンガポール: 0.56%(国民約180人に対して日本人1人)
 香港:            0.35%(国民約290人に対して日本人1人)
 豪州:            0.35%(国民約290人に対して日本人1人)
ちなみに、
 ASEAN平均: 0.026%(国民約3,860人に対して日本人1人)
くらい。もちろん都市部や工業団地に日本人は密集しているわけで、実際生活している上での実感はもっと日本人比率は高いものと思う。シンガポールのコンドなんて、同じ塔に何世帯も日本人家族が入居してたりするしね。
進出先としては、マーケットの大きい、すなわち人口の大きい国が狙い目であり、かつまだ日本人がそんなに進出していない国は、インド、パキスタン、バングラデッシュ、ミャンマーか。あとは、インドネシア、中国の内陸部がどれだけ伸びるかといった感じか。正直、日本人のビジネスマンの感覚として、これから中国に製造拠点を持っていくことは考え難い。当然マーケットは大きいので、中国で消費する分を中国で生産することはあるだろうが、人件費も高いので自然高性能品へシフトしていくと思う。これからはASEANが中国に輸出するための製造工場となっていくだろう。ASEANの財閥も華僑系が多く、中国進出の親和性は高いものと思う。ASEANの財閥が中国企業を買収するし、その逆も増えてくるだろう。いずれにせよ、世界の中心は中国⇔ASEANに移っていくだろうし、先進国は如何にこれを吸収していくかが重要となると同時に、自身も防衛していかなければならない。

グラフ左下の拡大版。

こうやって見える化してやると、日本人の進出動向が良く分かる。

今後も日本人の海外進出は続くだろうけど、国内がどんどん衰退していくのが確実なのが悲しいよね。海外出て行くのはいいことだと思うけど、やっぱり国内の人口もキープし、外国人がもっと来たい国になっていってほしいな。