2015年9月11日にシンガポールで総選挙が開かれた。これに伴い、9月11日は祝日となった。
シンガポール議会は、1院制で任期は5年であり、議員定数は総選挙の区割りが毎回見直されるが、小選挙区(SMC、1人選出)が13区、集団選挙区(GRC、4~6人選出)が16区の29区で合計89議席が争われた(前回は87議席)。
集団選挙区では、党ごとに候補者を選出数分擁立し、得票数の高い党が全議席を総取りする方式である。
選挙で選ばれる議員以外には、以下の2種類の方法で選ばれる議員もいるとのこと。
- 非選挙区選出議員(選挙で得票率の高かった落選野党候補、最大9人)
- 指名議員(大統領が指名した科学、文化等の分野で優れた国民、最大9人、任期2年半)
ちなみに選挙は義務であり、投票率は93.56%と北朝鮮や北欧なみに高い。
これまでの経緯
シンガポールは明るい北朝鮮と言われるように政治体制は独裁的にPAPが支配をしてきた。1965年の独立以降1984年までは、全議席を占拠していた。84年以降、小選挙区と集団選挙区に分ける現行の選挙制度になり、少数政党が数議席獲得していたが、前回2011年にいきなり6議席を野党最大勢力WPが獲得することになり、徐々に与党PAPの影響力が弱くなっていく中での今回の選挙であった。
前回選挙のトラウマ
前回の選挙は与党PAPにとって相当なトラウマとなったらしい。
なぜなら、以下のような衝撃的な結果となったから。
- PAPの無投票当選が37議席→5議席へ激減。(しかもこの5議席も野党の立候補届が30秒遅れたから。)
- PAPの得票率が66.6%→60.1%へ低下。
- 独立以後はじめて6議席を失う。
- 現制度化はじめて集団選挙区で敗れる。(しかも現役外相が率いるAljunied区。)
これが引き金となって、当時、リー・クアン・ユーとゴー・チョク・トンは声明を出し、同時に閣僚ポストだけでなく政府機関ポストも辞任して国家運営の表舞台から降りることとなった。
そういった前回のトラウマを与党PAPは乗り越えられるのか、ということに注目が集まっていた。
今回の結果
さて、結果だけ見てみると、PAPは前回失った勢いを取り戻し、得票率も増加した。
得票率を前回と比較してみると、WPはほぼ変わらずNSP(National
Solidarity Party)が大きく得票率を減らし、それをPAPが取り込んだように見える。
議席は野党で唯一議席をもつWPが同数の6議席を維持し、今回増えた2議席はPAPが書く遠くしたため、議席占拠率もPAPが微増した結果となる。
では、なぜ今回PAPは勢いを取り戻したのか。
リー・シェンロン首相も選挙後に語っているように、SG50の効果は大きい。
SG50の前には、シンガポール国民の愛国心を刺激するような宣伝も多かったし、シンガポーリアンは多くの人がSPP50のセレモニーになんらかの関わりを持っていたと考えられ、そこでやっぱり今のシンガポールがあるのはPAPのおかげだよね、となったのではないか。
そういう意味では、直前のリー・クアン・ユーの死去も大きく、改めてリー・クアン・ユーの偉大な業績を認識した人たちがもういちどPAPに戻ってきた可能性もある。
リー・クアン・ユーの追悼番組がたくさん流れていたが、やっぱりこの人すげーなー、と外国人の自分自身も思わされるエピソードが多くあった。
おそらくリー・シェン・ロンは首相としては今回が最後の任期だと考えているのではないか。スピーチでも次回選挙に向けて第4世代を育てていくと言っていた。確かに、国会議員に若い人たちも増えてきている。
仮に、リー・シェン・ロンが首相を辞めたとして、次回首相はだれになるのか。リー家の後継は残念ながらまだ若すぎるので候補にはならない。初のインド系が首相となるのか(財務相のTharman)。次回選挙も目が離せない。
ちなみいに、今回からSample Countという抽出に速報をやっていた。この仕組みも選挙特番で説明していたが、とてもわかりやすく、さすがシンガポールと感じた。こっちは国がつくる説明パンフレットなどは非常にわかりやすく、こういったところは日本も見習ってほしいなぁと思う。