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2014年7月29日火曜日

インドネシア文化 ~断食について~


今日は、インドネシアでの断食について書いてみたいと思う。
ご存知の通り、インドネシア人の8割近くはイスラム教徒といわれており(当然地域によって比率は大きく異なる)、イスラムの行事である断食も国のイベントとほぼ同義である。

僕がインドネシアへの移住を開始した2013年7月24日もちょうど断食中だった。
妻と遠距離恋愛中の時は、もっと後の季節だったような気がしていたが、それもそのはずで、この断食期間は毎年11日程度ずつ早めに訪れ、33年でまた同じ時期に戻るらしい。
参考までに、最近の断食期間をwikipedia先生より拝借。

西暦   イスラム暦最初の日最後の日
2012年    1433年     7月20日      8月18日
2013年    1434年     7月10日   8月7日
2014年    1435年     6月28日     7月27日
2015年    1436年      6月18日     7月16日
2016年    1437年     6月6日   7月5日
2017年    1438年      5月27日     6月25日
wikipediaより


断食のことをインドネシアでは、「puasa(ぷあさ)」と呼ぶ。
日本人は断食のことを「ラマダン」と勘違いしているが、ラマダンは断食が行なわれるイスラム暦の9月のことであり、「ラマダン」は、断食という行為を示すわけではないらしい。
ちなみに、インドネシアでよく耳にする「レバラン」とは、ラマダン明けの10月1日のこと、つまり元旦を指すようである。

下は、インドネシアの断食中のポカリスエットのCM(2013年版)



CMの最後で言っているのは、

 Selamat puasa!(すらまっ ぷあさ)

「Selamat ~」は、英語で言うところの「Good ~」(~morning, afternoon, evening)と同じ感覚

イスラムの新年を迎えるわけだから、

 「あけまして、おめでとう」

くらいの意味だろうか。


断食期間中は、ご存知の通り日の出ている間は飲食禁止である。
(実は、意外にも例外は多く存在する。このことについては、最後のところで紹介する。)
 とはいえ、イスラム教徒以外の人は断食をしないわけで、断食している人の前でモリモリ、パクパク食べている姿を晒すのは酷だということで、店によってはカーテンをかけて外から飲食の様子が分からないようにしているところもある。


この写真は、近所のstarbucksの店内と店外から撮った写真


ちょっと話はそれるが、冒頭で人口の8割ちかくがイスラムと書いているが、だったら断食をしない人の方が少数派かというと、ジャカルタではそう感じない。体感的には、半分は非イスラムだろうか。理由は、外国人が多いことと、比較的裕福な非イスラム系の中華系インドネシア人が多いからである。後述するが、イスラム系の人も断食しない人も多い
そんなわけで、中心部のショッピングモールではもはやカーテンでしきることもしていない。


さて、この断食中、我々外国人が気をつけないといけないこと。
それは、渋滞である。
たまたまこの時期に中心部へと出かけたのだが、行きは12時ごろに向かい車で20分くらいで着いた。
16時ごろ、同じ道で帰ろうとしたところ、


3時間以上かかった。。。


実は、断食期間中は、みんな一斉に定時で退社する。
会社によっては、昼休みを短くし退社時間を早めたりもしている。
そんなもんで、16時以降の中心部はほぼ交通機能がマヒしている。

この一日の断食明け(buka puasa, buka=open)が訪れると、みんな家へと急ぐのかというと、そんなことはない。
むしろ、家族、友人家族たちと外食をする。
そんなわけで渋滞は一層悪化し、ショッピングモールのレストラン前はどこも行列をなしている。
現地人にとってはこの時期は外食が多くなるのでとても楽しい時期かもしれない。
日本人が年末に忘年会が多くなるのと同じである。

そういえが、この時期にしか売っていないkolakという美味しい飲み物がある。





 夕方が近づくと、どこからともなくおばちゃんや若い兄ちゃんが現れ路上で販売が始まる。
みんなタッパーにつめて持ち運び。


 kolak
 
味は、お汁粉に近いだろうか?
白い部分が、ココナッツミルクを固めたものでちょっとしょっぱい味付けがされている。
黒い部分は甘く煮た小豆汁。
断食以外の時期も売ってほしいなぁ、といつも思う。


この断食が終わると年によって違うが一週間程度の休みとなる。
お正月休みみたいなものだと思う。
そのため、断食が終わる前日は日本の大晦日のように寺院に行き、世通し食べたり、お祈りしたりしている。(熱心な信者は、断食が終わる1週間くらいまえから毎晩お祈りに来るらしい。)

町では花火も鳴りっぱなしだし、夜はかなり騒がしい。

深夜のPondok Indahの寺院(Masjid)
この建物の半地下で、みんな熱心にお祈りを捧げていた。
小学校低学年くらいの子もいた。もう午前2時ちかくなのに。

寺院前の広場。
屋台もあって、みんな食べたり談笑したりしている。
子供もそこらじゅうで遊びまくってる(笑
このあと午前3時過ぎになると、(日の出前の)朝ごはんを食べだす人も。



このお正月期間は、子供を持っている家族は大変な時期である。
インドネシア人は共働きが多く、中流以上の家庭の多くは住み込みのベビーシッターを雇っている。
とはいえ、このお正月期間は帰省することも多いため、子供の世話は自分たちで見なければならない。

しかも、帰省後にはバックれるベビーシッターも多い。。。

実際、知人たちを見ていてここ2年で2,3回ほどそのことを聞いているので、決して珍しいことではないと思う。
インドネシア人は貯蓄をする性格ではないので、1年頑張って実家に帰ると多少お金も溜まっているので、お金がなくなるまでまたのんびりするか~、みたいな感じになるんだと思う。
この正月休み前には、THRといって1か月分の給料を余分にもらえるしね。

さて、ベビーシッターにバックれられた方はたまったものではない。
家族にヘルプを頼みながら、また新しいベビーシッターを探すのである。
ベビーシッターを探すのも実は難しいことで、人材派遣会社からの派遣であればすぐに補充をよこしてもらうこともできるそうだが、質の悪いベビーシッターの場合、子供が泣くのを防ぐために睡眠薬を飲ませたりするとんでもないベビーシッターもいるらしく、口コミで信頼できる人を探すようである。


さて、ここまでインドネシアにおける断食の様子について書いてきたが、最後に、

「なぜインドネシア人が断食できるのか。」

ということについて書きたい。

実はこの疑問は、インドネシアに移住する前から抱いていたものである。
日本人が断食と聞くと、かなりストイックな印象を受けるが、インドネシア人からはあまりストイックな印象を受けなかった。
仕事も適当だし、仕事中も休んでばっかりだし、道端で寝ている人もいるし、、、

でも、実際に自分がラマダン中に生活をする中で、なぜインドネシア人が断食をできるのかが分かった。

楽しいからである。

インドネシア人はイベントが大好きだし、特に大勢の人と食べることが大好きである。
だから、この期間は夜が待ち遠しくてたまらないし、このイベントに参加しているって感じも芽生えるから断食もできるのである。

しかも、

結構多くの人が、断食をしていないのである。

他のイスラム国家はよくわからないが、インドネシアではとにかく頑張らなくていい文化である
断食も、子供、妊婦、病人等はしなくてもよいし、女性も生理中であればしなくていいらしい。
ラマダン中には生理が2週間以上も続く人がいるとか。(要は、嘘ついて断食をしない。)
極めつけは、仕事に支障が出る人も断食をしなくてよい、ということ。
私が雇っていた運転手も普通に食べてるし、多少気がとがめるのか人目に付かないところでこっそりお弁当を食べてる人もいるらしい。

そもそも断食は苦しい修行だと思っていたが、インドネシア人は苦しいことが苦手なので、自分のできる範囲のことだけやって、楽しむ部分は最大限楽しむというのが本当のところのようである。

ところで、この断食明けの休みでは、ジャカルタは多くの人が帰省してしまっているので、中心部は閑散としており、お店もお休みのところもある。観光で来る際はご用心を。
そして、お正月が空けると、お小遣いの少なくなった警察官が、いつも以上に取締りを強化し、お小遣い稼ぎをするので、これまたご注意を。。。